町田康『くっすん大黒』
本棚#12
町田康の小説デビュー作。
「もう三日も飲んでいないのであって、実になんていうかやれんよ。ホント。酒を飲ましやがらぬのだもの。ホイスキーやら焼酎やらでいいのだが。あきまへんの?……」
いきなりこの超口語体にぶん殴られる。けれど、どんどん読めてしまう。
この人の文体は多分真似しようとするとつまらないのだと思う。なぜかというとこの人は本当の事を書いているような気がするからです。狙ってるのではなくきっと本心で書いているから面白い。本気で「やれんよ」という実感を持っている。この人は書き手を賢く見せようとかそういった衒いが全くなくて、本当に思ったこと感じたことを書いているような気がします。だから良い。
これは真似できないというか、この人の色んな経歴が小説に結実しているのだと思います。
最近は主に古事記とか時代物を書いているみたいですが、全部この文体なのでつらつら読めてしまうのがなんというかずるいというか。